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高三 ・部誌投稿「自己紹介という名のラヴソング」

短編小説「手紙形式第一番」に続くものとなる散文。自己紹介の形を借りたラヴソングである。「哀だろ哀」。

—どれも似たようなのに、なくならないね。—

変なところで目立ちたがるんですよね。実際ひどい恥ずかしがり屋さんなのに。変わっているね、と言われるのをいつも期待して、何か特別な目で見られるように、ずっとしてきた。担任の先生に、きちんと認めてほしかった。それが、僕の存在をアピールする方法だった。
と、この様に定義してみても、また違うな、とか思う。なかなか難しい、ただ、すごく日本人だし、日本語の世界と、よく言って穏やかな世界にどっぷり浸かっている。中学のとき、眼鏡かけていて、歯が出ていて、のび太顔の典型的日本人じゃない、とか、噂しているのを聞いたことがある。自分のことを、小声で、半分ぐらい僕に聞かせるために言っているような話を耳にして、どう対応してよいのだか、未だよく分からない。彼女等の話は、どこにでもいるよ、といったことだった。 −こんな奴どこにでもいるさ。結局70年代生まれの日本人だ。

今、全く別の話題にうつるのに、こういった文体はひどくつらいんじゃないか、と思案していた。大体思案する、なんて動詞使っているところがもうおかしい。そういえは、1度書いた読書感想文を、最初と最後の段落以外、順番を変えたことがある。1文ごとの文宇数を数えて、文の長さがだんだん長くなるようにしていった。もちろん意味は通じない。通じなくてもいいとその時思っていたから。そして、人を驚かすのが好きだから。
変なところで…。やっぱり、いかに注目されるか、てことに全精力を傾けてしまう。昔、ブラックユーモアとも言われた、その頃に比べれば、おとなしいような気がする。今年の読書の窓に部外者の僕が載っていたりするのだけど、ある意味でとてつもなくいやらしい文だったりする。

読まなくったっていいと思う。あ、このつたない文をってことじゃないよ。(ま、この文だって読んだって何の役にも立たないと思うけど。)
いわゆる名文だろうが、名作と言われようが、読まなくちゃいけない、なんてことないと思う。そう僕は、思っている。
本を読めなかった人や、字が読めなかった人だってきっといたんだし、いるんだろうし、そういった人たちが僕らに比べて、それほど不幸せだったとも思わない。だいたい読書量と幸せは比例しない。読書量と人柄の良さも比例しないと思う。(自分から進んで本を読む人たちは、ほとんど、自然や他人も愛し、好ましい人たちなのだけど。)いくら読んでも、分からないことは分からない。役に立つようなことにお目にかかれるような幸運はほとんど訪れない。むしろ読めば読むほど不安になったりする。
だから、読書なんて“めんどい”なんて人は、それでいいのだ。きっと。そのかわり、その余った時間を有意義に使おうね、高校生活なんてあっという間なのだから。と、もっともらしい言葉で終わらせるのだった。 P.S. 演劇部は男子部員を欲している。

ひねくれた根性の産物である。こういった感じでしか書けない男を、本当に哀れな奴だと思う。まともな方法では太刀打ちできないことを知っているからなのだろう。奇抜な方向へと走りたがる。自分自身に自信がないぶん、書いたものだけでも注目を集めようと、あの手この手を使ってくるのだ。十分心してかからなければいけない。次にあげる文も、表面上の作者の見せる弱さにだまされてはいけない。彼は、このようなことは露とも思はず、のっぺりと平気な顔でいるのだ。

「人は不平等のただ中に生まれてくる」。この1文を目にした僕は、妙な安心感に包まれました。全てのいらいらが解決したような気分になりました。興奮状態でもありました。それから2時聞、あれやこれやと考えました。どうしようもないもの、力の及ばないものについて考えました。例えば、他人の気持ちや、過ぎて行く時間、それに生まれた環境。何でもないことでした。ただ、世の中は人の都合のいいようにはできていない、と思えばすむことでした。人は平等には造られているのかもしれませんが、同じ時代、同じ地域には生まれてこないのです。
1096年ー第1回十字軍の年ですが、その年生まれたコンスタンティノープルの靴屋の3男は、大学には行けません。そして、彼はコンスタンティノープルの外にあるものを見ることがなかったでしょう。イギリスのノルマン朝による治世も、白河上皇の院政も知るところでなかったでしょう。
世界は僕です。僕だけの世界です。「住む世界が違う…」の解釈の拡張です。オーブン戦投げられなかった中日の与田、天安門で装甲車に押しつふされた学生、親ともなれば考え方が違い、僕が駅の構内で奇妙なことをやり出すと奇異な目で見ます。(当たり前か。)50億人は同じ世界にいる訳でもありません。実際、50億の人が、今地球上にいることを確認した人がいる訳でもありません。僕の最初の台本(1年生夏〉の台詞ではこうなっています。
少女 縄文時代って、日本中ぜーんぶ合わせても25万人しかいなかったんだって。そのずーと、ずーと前は、ゴジラがうじゃうじゃいて、そのまたずーと前は、お魚しかいなかったなんて、そんなのうそだよね。骨が見つかるっていうけどさ、宇宙人がよその星から持ってきたんだよ。私知っているんだもん。恐竜の骨っていうのにつれてってもらったのだけど、あーんな大きな体してんのに、私1度も見たことないんだから。そのときやっぱ宇宙人の子どもが、砂遊びして忘れてっちゃったんだ、て気づいたの。え、だって宇宙人て大きいんでしょ。ウルトラマン知らないの。子どもっていってもさ、お父さんよりずーとずーと大きいんだよ。きっと。私だってこーんくらいのぬいくるみ持ってるし、ちっともおかしくなんかないもん。で、結局、私が生まれる前て何もなかったと思うの。私が生まれたときにいろいろ始まって、私が死んじゃったら、それでおしまい、てわけ。テレビや映画とおんなじで、みーんな作り話。

なかなか厄介かもしれない。ここまで虚飾に満ちてくると、作者の意図にまんまとはまり、“作り話”でぬり固められているのにも気付かず、真実であるかのように思われるかもしれない。書かれたものは彼とは別物であり、表現されたと同時に、それは真実でなくなることに気付かなければいけないだろう。それではもう1つ見てみることにしよう。卒業時に渡した手紙である。

3月23日(土)11時から「Tear」上演。
昨年のOO先輩と同じように、1年遅れで、僕も受験生になります。だから、これで、少しの間お休みです。3月1日は、ただ式が行われただけです。それでも卒業式というものに、それ以上のものがあるのなら、おめでとうございます。さようなら。またどこかで会えるよ。楽しかった。卒業は学校だけしゃないんだ。馬鹿野郎!! 一宮高校で過ごした時間が最良のものとも思わない。取り返せないの。
では、23日、幕が下りるまでの1時間。中途半端に内情を知っていると頭を悩ますことになるでしょう。終わってから石を投げないように。

こういうのをナルシストの手紙、というべきか。男が書いたものだと思うと鳥肌が立つ。ちなみに、私がこのようなものを所有しているはずがないから、アース先輩のところに見せてもらいに行った。11時を過ぎていた。劇団プロペリンに入ったらしく、帰りがいつも10時半頃だそうだ。他にもいろいろ話をした。男同士が、深夜ひそひそ話しているのである。余り美しい光景でもない。

そう、言葉にするとほんとうでなくなる気がするから。
ただ、ほんとうのことがなかなか見つけられないでいるのです。そんなぼくにとっては、京都大学に向かってただがむしゃらにがんばるのは、楽なことであるのです。そして、表現するということに困っているのです。なにかしらのうそと、なにかしらのほんとうが混ざっている気がするのです。野田英樹さんがなぜあんな芝居を打つようになったのかがわからないでいるのです。(関係ないか。)

こういうこと考えるのは、日頃使わない頭を働かすことなので、とても疲れました。もっと芝居について書けば良かったな、と後悔しています。でもま、自己紹介、ということだったから。え、自己紹介にもなってない。やだな、ちゃんと読んでよ。自己紹介になっているじゃん。 終わり。




見てみて真似る やってみて真似る
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